イスラーム精肉店

韓国でロングセラー。英語版とトルコ語版も翻訳出版された話題作

韓国文学セレクション

イスラーム精肉店

  • ソン・ホンギュ/著
  • 橋本 智保/訳
  • 四六判上製
  • 256頁
  • 2100円+税
  • ISBN 978-4-7877-2123-5
  • 2022.01.31発行
  • [ 在庫あり ]
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書評・紹介

紹介文

〈僕は自分の体に残っている傷跡の起源を知らない。〉

「僕には故郷がない。
懐かしい原風景もなければ、見慣れたものにまつわる記憶もなかった。
だから、どこにいても僕にとっては故郷であり母国だ。
誰であろうと僕の旧友であり家族だ。」

その日、僕はこの世界を養子に迎えることにした——。

朝鮮戦争の数十年後、ソウルのイスラーム寺院周辺のみすぼらしい街。
孤児院を転々としていた少年は、精肉店を営む老トルコ人に引き取られる。
朝鮮戦争時に国連軍に従軍した老人は、休戦後も故郷に帰らず韓国に残り、
敬虔なムスリムなのに豚肉を売って生計を立てている。
家族や故郷を失い、心身に深い傷を負った人たちが集う街で暮らすなかで、
少年は固く閉ざしていた心の扉を徐々に開いていく。

「僕はハサンおじさんに訊きたかった。
僕の体にある傷跡は、なにを守ろうとしてできたものなの?
僕にも守るべき魂があったの?
もしあったとしたら、僕の魂はなぜいまも貧しいの?
なぜ僕は肉体も魂も傷ついたの?
僕の魂は肉体を守ってやれなかったし、肉体は魂を守ってくれなかった。
ということは、僕の魂と肉体はずっとばらばらだったのだろうか——。」

韓国でロングセラー。英語版とトルコ語版も翻訳出版された話題作

装画:MISSISSIPPI
装幀:北田雄一郎

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著者紹介

ソン・ホンギュ(孫洪奎/손홍규/Son Hong-kyu)

一九七五年、全羅北道生まれ。東国大学国語国文学科卒業。
二〇〇一年、「作家世界」新人賞を受賞し、デビュー。
短編集に『人の神話』(2005年)、『親書いわく』(2008年)、『トムはトムと寝た』(2012年)、長編小説に『鬼神の時代』(2006年)、『青年医師 張起呂』(2008年)など。
李箱文学賞、白信愛文学賞、呉永寿文学賞などを受賞。
二〇一〇年発表の『イスラーム精肉店』で老斥里平和文学賞を受賞。戦争という集団的狂気が人々にもたらす凄まじいトラウマと、人種や宗教等で人を区別することの無意味さを描いたこの作品は、英語版とトルコ語版も出版され、多くの読者を獲得している。
邦訳エッセイに、「絶望した人」橋本智保訳(『僕は李箱から文学を学んだ』クオン)。

橋本 智保(ハシモト・チホ)

一九七二年生まれ。東京外国語大学朝鮮語科を経て、ソウル大学国語国文学科修士課程修了。
訳書に、キム・ヨンス『夜は歌う』『ぼくは幽霊作家です』『七年の最後』(新泉社)、チョン・イヒョン『きみは知らない』(新泉社)、ソン・ホンギュ『イスラーム精肉店』(新泉社)、鄭智我『歳月』(新幹社)、李炳注『関釜連絡船(上・下)』(藤原書店)、朴婉緒『あの山は、本当にそこにあったのだろうか』(かんよう出版)、クォン・ヨソン『レモン』(河出書房新社)『春の宵』(書肆侃侃房)、チェ・ウンミ『第九の波』(書肆侃侃房)、ユン・ソンヒほか『私のおばあちゃんへ』(書肆侃侃房)、ハン・ジョンウォン『詩と散策』(書肆侃侃房)、ソン・ボミ『小さな町』(書肆侃侃房)、ウン・ヒギョン『鳥のおくりもの』(段々社)など。

関連書籍

  • きみは知らない
  • ギター・ブギー・シャッフル
  • ぼくは幽霊作家です
  • 夜は歌う
  • 舎弟たちの世界史
  • 我らが願いは戦争
  • 目の眩んだ者たちの国家FTP
  • 海女たち