災害ドキュメンタリー映画の扉

東日本大震災後に映画を観るということ——。未来との対話としての「震災映像アーカイブ」

災害ドキュメンタリー映画の扉

東日本大震災の記憶と記録の共有をめぐって

  • 是恒 さくら/編
  • 高倉 浩樹/編
  • A5判
  • 272頁
  • 2500円+税
  • ISBN 978-4-7877-2001-6
  • 2021.01.31発行
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書評・紹介

紹介文

東日本大震災の被災地において、ドキュメンタリー映画の撮影・制作・上映はどのように行われてきたのか——。
映画が生み出す対話の力を制作者たちと考える、異色のドキュメンタリー映画論。

《未来との対話としての「震災映像アーカイブ」》

数えきれないほどの作品があると考えられる、東日本大震災に関するドキュメンタリー映画。記憶の継承と防災を私たち一人ひとりが担っていく課題として考えたとき、多くの人に観賞され共有される映画は大きな力を生み出す。
被災地において、それらの作品はどのようなかたちで、どのくらいの数がつくられ、上映されてきたのだろうか。映画作品をアーカイブとして公的な場で収集・保管・公開することは難しく、その全容の把握は困難である。
本書は、「震災映像アーカイブ」の一つの取り組みとして、東北大学における上映会の記録と、映画制作者たちとの対話をまとめたものである。東北大学の災害人文学グループでは、東日本大震災発生以降、文系・理系さまざまな領域の研究者らが共同活動を行ってきた。本書はそうした成果の一端として、学問領域を越えて多様な専門家の知見を持ち寄り、ドキュメンタリー作家たちと対話を行ったユニークかつ貴重な記録である。

NHK特集ドラマ『ラジオ』/『廻り神楽』/『被ばく牛と生きる』/『赤浜ロックンロール』/『ガレキとラジオ』/『おだやかな革命』/『福島 生きものの記録』

目次




刊行に寄せて……今村文彦

はじめに

第1章 東日本大震災のドキュメンタリー映画から記憶の共有を考える……是恒さくら

第2章 東日本大震災発生後、映画の現場では
・実話からドラマへ:ドキュメンタリーの表現、フィクションの伝達 〜NHK特集ドラマ『ラジオ』を観る〜……岸 善幸・菅原睦子・髙橋卓也

第3章 ドキュメンタリー映画を通した対話から考える記憶の継承と防災
・『廻り神楽』を観る……遠藤 協・北村皆雄・小谷竜介
・『被ばく牛と生きる』を観る……松原 保・小倉振一郎
・『赤浜ロックンロール』を観る……小西晴子・坂口奈央
・『ガレキとラジオ』を観る……山国秀幸・山内明美
・『おだやかな革命』を観る……渡辺智史・土屋範芳
・特別対談 東日本大震災後に映画を観るということ……三浦哲哉 (聞き手:是恒さくら)

第4章 東日本大震災の映画ができるまで
・北村皆雄(『廻り神楽』エグゼクティブ・プロデューサー、構成)
・松原 保(『被ばく牛と生きる』監督)
・岡田啓司(『被ばく牛と生きる』登場人物、岩手大学農学部教授)
・小西晴子(『赤浜ロックンロール』監督)・安岡卓治(『赤浜ロックンロール』プロデューサー、日本映画大学教授)
・渡辺智史(『おだやかな革命』監督)

第5章 東日本大震災以降、継続される記録活動
・ファインダー越しの対話:記録が橋渡しする過去・現在・未来 〜上映作品『福島 生きものの記録』〜……吉田茂一・黒石いずみ・是恒さくら・原田健一・高倉浩樹

第6章 デジタルアーカイブと映画から考える災害映像記録の価値……高倉浩樹

おわりに


著者紹介

是恒 さくら(コレツネ・サクラ)

東北大学東北アジア研究センター災害人文学研究ユニット学術研究員。
美術家として活動し、北米や東北各地の捕鯨、漁撈、海の民俗文化についてフィールドワークと採話を行い、リトルプレスや刺繍、造形作品として発表する。
災害人文学研究ユニットでは、研究会の企画運営および東日本大震災をめぐるドキュメンタリー映画の制作者らへの聞き取りを行ってきた。

高倉 浩樹(タカクラ・ヒロキ)

1968年生まれ。
東北大学東北アジア研究センター教授。専門は社会人類学、シベリア民族誌。
著書に、『極北の牧畜民サハ——進化とミクロ適応をめぐるシベリア民族誌』(昭和堂、2012年)、『極寒のシベリアに生きる——トナカイと氷と先住民』(編著、新泉社、2012年)など。
震災関連の業績に、『聞き書き 震災体験——東北大学 90人が語る3.11』(東北大学震災体験記録プロジェクト編、高倉浩樹・木村敏明監修、新泉社、2012年)、『無形民俗文化財が被災するということ——東日本大震災と宮城県沿岸部地域社会の民俗誌』(高倉浩樹・滝澤克彦編、新泉社、2014年)、『震災後の地域文化と被災者の民俗誌——フィールド災害人文学の構築』(高倉浩樹・山口睦編、新泉社、2018年)、『災害ドキュメンタリー映画の扉——東日本大震災の記憶と記録の共有をめぐって』(是恒さくら・高倉浩樹編、新泉社、2021年)、『災害〈後〉を生きる——慰霊と回復の災害人文学』(李善姫・高倉浩樹編、新泉社、2023年)など。

関連書籍

  • 無形民俗文化財が被災するということFTP
  • 震災後の地域文化と被災者の民俗誌FTP
  • 災害〈後〉を生きる
  • 聞き書き 震災体験FTP
  • 避難と支援
  • 鳥栖のつむぎFTP
  • 温泉からの思考FTP