柳田国男の民俗学を生きた女性たち
近刊

黎明期の女性民俗学者たちの生と学問の軌跡

柳田国男の民俗学を生きた女性たち

瀬川清子・能田多代子・江馬三枝子・大藤ゆき、そして「女の会」

  • 杉本 仁/著
  • 四六判上製
  • 352頁
  • 3500円+税
  • ISBN 978-4-7877-6337-2
  • 2025.11.10発行
  • 梟社/発行
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紹介文

〈いま/ここ〉を生きる「常民」の生活と心意の沃野に分け入り、柳田民俗学が新しい史学の創成から確立にむかった昭和十年前後、柳田国男の門を叩いて、男もすなる学問の道を歩き始めた女性たちがいた。彼女たちに共通していたのは、アカデミズムとは無縁に、「どうしたら人間は学問によって倖せになれるか」というやみがたい志向だった。彼女たちの希求に応答する学問は、柳田の民俗学を措いてほかにはなかった。その柳田を師とし、支えた、女性民俗学者たちの誕生から戦中戦後への足跡をたどる。

目次

はじめに
女性による民俗学の出発/ほか

第一章 瀬川清子——「良妻賢母」と闘う自己実現の民俗学
敗戦、そして東北からの再出発/柳田国男の死と「良妻賢母」/ほか

第二章 能田多代子——郷土を凝視する「豆粒拾い」の民俗学
「七ツ前は神」と初物儀礼/席亭の民俗学/ほか

第三章 江馬三枝子——地域を工作する民俗学
プロレタリア運動における江馬修と三枝子/飛驒高山での日常と『飛驒の女たち』/ほか

第四章 大藤ゆき——世を啓蒙する民俗学
恩賜財団母子愛育会/『児やらひ』/ほか

第五章 柳田国男を支えた「女の会」
戦火をくぐりぬけた女性たち/丸山久子——自己抑制と自己主張の民俗学/矢島せい子——ことばをかける民俗学/ほか

おわりに

著者紹介

杉本 仁(スギモト・ジン)

1947年山梨県に生まれる。青山学院大学を経て、同大学院修士課程修了。柳田国男研究会会員。東京都立高校教諭を定年退職後、都留文科大学、山梨学院大学、山梨県立大学、および山梨県立ひばりが丘高校などで非常勤講師を勤める。
共著に『柳田国男伝』のほか、著書に『選挙の民俗誌』(野口賞)、『柳田国男と学校教育』、『民俗選挙のゆくえ——津軽選挙 vs 甲州選挙』(日本臨床政治学会賞)など、代表的論考に「寄合民主主義に疑義あり——宮本常一「対馬にて」をめぐって」(『柳田国男・民俗の記述』)、「宮本民俗学の陰画としての上野英信」(『季刊東北学』4号)、「後藤総一郎論」(『地域に根ざす民衆文化の創造』)、「宮本常一と谷川健一、および網野善彦(1)〜(11)」『甲斐』147号〜159号)などがある。

関連書籍

  • 選挙の民俗誌
  • 民俗選挙のゆくえFTP
  • 柳田国男と学校教育
  • 柳田国男の学問は変革の思想たりうるかFTP
  • 柳田国男以後・民俗学の再生に向けて
  • 柳田國男と考古学FTP