持続可能な社会への転換はなぜ難しいのか
近刊

個別の環境問題の解決を社会の転換に結びつけるために

シリーズ 環境社会学講座 5

持続可能な社会への転換はなぜ難しいのか

  • 湯浅 陽一/編
  • 谷口 吉光/編
  • 四六判
  • 312頁
  • 2500円+税
  • ISBN 978-4-7877-2405-2
  • 2025.06.10発行
  • 書店サイトへ

紹介文

〈個別の環境問題の解決を社会の転換に結びつけるために〉

持続可能な社会への転換は多くの人に共有されている目標であり、数々の取り組みが行われてきたにもかかわらず、なぜ達成できないのか。
不正義の解消と公正の実現を追求しながら、個別の取り組みの成果を社会の変化につなげる道筋を探り、持続可能な社会への転換を達成する方途を考える。

〈なぜ、環境問題の解決は目標に向かって一直線に進まないのだろうか。何が紆余曲折を生み出すのだろうか。
本書の立場は、個別の環境問題の一部については部分的に解決しているととらえるものの、社会全体では持続可能な方向に進んではいないと考える。
持続可能な社会への転換は、既存の取り組みの延長では実現しないだろう。社会の大きな変化が伴うことを視野に入れておく必要がある。
転換の実現は、今ある社会を前提とした常識が変化することでもある。常識を見直しながら必要となる変化に柔軟に対応していくことで、持続可能な社会への転換の道筋がみえてくるのである。——編者〉

【執筆者】立石裕二/篠木幹子/藤原なつみ/金太宇/笹岡正俊/佐藤圭一/小野奈々/スティーブン・R・マックグリービー/大門信也

目次

序章 持続可能性とは何か……湯浅陽一・谷口吉光

I 環境問題の解決過程の蛇行性
第1章 持続可能な社会への転換はいかにして可能か——SDGsの課題とその先への道筋……湯浅陽一・谷口吉光
第2章 廃棄物問題への取り組みは、いかに揺れ動いてきたか……湯浅陽一
第3章 再生紙は本当に「環境にやさしい」といえるのか——環境問題の情報化と科学・技術の役割……立石裕二
第4章 環境に配慮した行動は広がっているのか……篠木幹子
コラムA 「持続可能な消費」の実現はなぜ難しいのか——社会的実践理論から考える……藤原なつみ

II 対策の制度化とその限界
第5章 中国におけるリサイクルシステムの制度化とごみに携わる人びとの生活——国家主導型ガバナンスの予期せぬ社会的影響……金太宇
第6章 環境・人権を守る企業の取り組みは何をもたらしたか——自主規制ガバナンスの「進展」による被害の不可視化……笹岡正俊
第7章 気候変動は企業の自主的取り組みで解決できるのか……佐藤圭一
第8章 有機農業はなぜ広がらないのか……谷口吉光

III 持続可能な社会への道筋をどう描くか
第9章 協働の時代における湖沼環境保全活動の成果——霞ヶ浦からの問い……小野奈々
第10章 日本における持続可能社会論の展開——エントロピー学派を中心に……谷口吉光
第11章 トランジション理論の有効性と課題……スティーブン・R・マックグリービー(谷口吉光訳)
コラムB ヒト・モノ・カネのローカルな循環を目指して——「東近江三方よし基金」を事例に……大門信也

終章 持続可能な社会への隘路を越えて……湯浅陽一

著者紹介

湯浅 陽一(ユアサ・ヨウイチ)

関東学院大学社会学部教授。
主要業績:『政策公共圏と負担の社会学——ごみ処理・債務・新幹線建設を素材として』(新評論、2005年)、「環境・財政に関わる政府の失敗——負担問題の解決と社会学の役割」(『社会学評論』66(2)、2015年)、『エネルギーと地方財政の社会学——旧産炭地と原子力関連自治体の分析』(春風社、2018年)、『環境問題の社会学——環境制御システムの理論と応用』(茅野恒秀と共編著、東信堂、2020年)。

谷口 吉光(タニグチ・ヨシミツ)

秋田県立大学名誉教授。
主要業績:「有機農業のパラダイム」(農文協編『みんなの有機農業技術大事典』農山漁村文化協会、2025年)、『有機農業はこうして広がった——人から地域へ、地域から自治体へ』(編著、コモンズ、2023年)、『有機給食スタートブック——考え方・全国の事例・Q&A』(靍理恵子と共編著、農山漁村文化協会、2023年)、『八郎潟はなぜ干拓されたのか』(秋田魁新報社、2022年)。

関連書籍

  • なぜ公害は続くのか
  • 複雑な問題をどう解決すればよいのか
  • 誰のための熱帯林保全か
  • サステナビリティの隘路
  • 答えのない人と自然のあいだ
  • 地域社会はエネルギーとどう向き合ってきたのか
  • 福島原発事故は人びとに何をもたらしたのか