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メディア2022.11.02

『さすらう地』の書評が「聖教新聞」に掲載されました

韓国文学セレクション『さすらう地』(キム・スム著、岡裕美訳、姜信子解説)の書評が、2022年11月1日付「聖教新聞」に掲載されました。

◎書評「この世界の“声なき声”に耳をすます」
https://www.seikyoonline.com/article/942358AA17CA378E719078230732C5A7?snstoken=b7fd3e89-3065-41cc-b1c8-80537a4ae4e3

〈作品の舞台は1937年、スターリン体制下のソ連。突然、沿海州に住む朝鮮人が何万人という規模で貨物列車に乗せられた。行き先も告げられず家畜同然に詰め込まれたのだ。狭く、汚い環境の中、彼らを乗せた列車は、息も凍るシベリアの暗闇を走り抜けて行く。〉

〈乗り合わせた人々は朝鮮人でありながらロシア風の名前を持ち、列車という閉鎖空間で、それぞれの来歴や身の上を語り、嘆く。絶望、憤怒、怨恨。救いようのない声、声、声――。〉

〈声の渦の中で発せられる少年ミーチカの言葉は根元的な問いだ。住む土地から強制的に引き抜かれるという悲惨の暗闇の中で、その言葉は“人間という存在がここにある”と訴えて、道しるべのように光る。〉

〈訳者は「争いはいつでも起こり、見えない苦痛、言えない苦痛を抱える人は常にどこかで生まれている」と語る。私たちが住まう世界は、今にも「さすらう地」と化す脆さの中にある。ならば、この世界のありように目を凝らし、声なき声に耳をすまさなければ、と思う。ミーチカの問いが、読後も止むことなく響いてくる。〉

◎『さすらう地』書籍詳細
https://www.shinsensha.com/books/4875/