加害者からの出発

宇井純セレクション[3]

加害者からの出発

  • 宇井 純/著
  • 藤林 泰/編
  • 宮内 泰介/編
  • 友澤 悠季/編
  • 四六判上製
  • 388頁
  • 2800円+税
  • ISBN 978-4-7877-1403-9
  • 2014.07.31発行
  • [ 在庫あり ]
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書評・紹介

紹介文

水俣病をはじめとする公害の原因究明と被害者支援活動に取り組み続けた環境学者、宇井純。その足跡と思想の全体像をまとめた全3巻。公害問題に専門家はいない――巨大技術文明を乗り越えた、ゆるやかな適正技術のありようを提言する。

■桑原史成氏「チッソが極秘にネコ実験をやっていたデータを見せられまして、宇井さんは驚いていました」

「公害問題というのはだいたい専門の隙間から出てくる」――。
工場から水銀を流した加害者の一人、技術者としての悔恨を記し、巨大技術文明を乗り越えた、ゆるやかな適正技術のありようを提言する。

公害との闘いに生きた環境学者・宇井純は、新聞・雑誌から市民運動のミニコミまで、さまざまな媒体に膨大な量の原稿を書き、精力的に発信を続けた。本セレクションは、その足跡と思想の全体像を全3巻にまとめ、現代そして将来にわたって、私たちが直面する種々の問題の解決に取り組む際につねに参照すべき書として編まれたものである。

「私が少年の時から追い求めてきた化学という学問は、おそろしくバラバラな知識の集積であり、しかもひどく非人間的な行動をする人々の職業であることを見出した時は、本当に悲しかった。」

「技術者というのは悲しい職業である。おおむねまじめで、自分のやっていることを正しいと信じ、他人に利用されてとんでもない逆の役割を果たす。」

「所属する企業や大学などの組織をはなれ、あるいは経済体制をはなれたときに、一人の裸の人間としてどれだけ人間の生活に寄与することができるか。」

目次

宇井さんの歴史が動いた日――桑原史成

I ある化学技術者の足取り
私の十代
生え抜きの一化学者の反省
高分子研究を振り返って
経験の行商人、旅役者を目指して
環境汚染と私
一技術者の自己変革

II 住民運動の作る科学
技術者の歴史観
公害問題に現われた科学的方法論の限界
住民運動の作る科学
「科学信仰」を助長しないか
環境社会学に期待するもの

III 適正技術の考え方
運動が支える適正技術の開発
適正技術の考え方
賢治と適正技術
オルタ技術を広げる

IV 水とともに歩む――下水道と私
沖縄の“水"を考えたい
構造汚職ささえる公共経済学
政治と技術
下水道と私
滝沢ハム泉川工場の経験

V 沖縄の開発と環境
沖縄の水問題と取り組んで
沖縄の開発と環境
米軍基地と環境問題

VI 本と人に学ぶ
自作を語る――『公害原論』
著者の願い――『キミよ歩いて考えろ』
『キミよ歩いて考えろ』をぜひ
職業を決めた本――シェンチンガー著『アニリン』
心の書――石牟礼道子著『苦海浄土』ほか
イプセン、賢治に学びつつ
レイチェル・カーソンを読む――改読のススメ
『カネミ油症』――河野裕昭写真報告
私達が日常食べているものの正体――有吉佐和子著『複合汚染上巻』
足尾鉱毒事件の意味するもの――荒畑寒村著『谷中村滅亡史』
失われた天地復活の必要性――立松和平著『毒風聞田中正造』
絶対的無原罪の受難と再生――色川大吉編『水俣の啓示不知火海総合調査報告』
地域開発の幻想と現実――飯島伸子編『公害・労災・職業病年表』ほか
水を考える本
『森の人四手井綱英の九十年』を読んで――森まゆみ著
写真に込められた志

主要著作一覧
宇井純略年譜

解説宇井純さんが切りひらいた科学のかたち――宮内泰介

著者紹介

宇井 純(ウイ・ジュン)

1932年東京生まれ。水俣病をはじめとする公害の原因究明と被害者支援活動に取り組み続けた環境学者。
東京大学工学部助手に就任した1965年に新潟水俣病の発生を知り、実名での水俣病告発に踏みきったため、同大学での出世の道を断たれ、以後「万年助手」として1970年から1985年まで同大学で自主講座「公害原論」を主宰。
1986年、沖縄大学教授。2003年、同大学名誉教授。2006年没。
『公害原論』(亜紀書房)、『公害の政治学』(三省堂)、『キミよ歩いて考えろ』(ポプラ社)をはじめ多数の著作があるが、そのほかに、新聞・雑誌から市民運動のミニコミまで、さまざまな媒体に膨大な量の原稿を書き、精力的に発信を続けた。

藤林 泰(フジバヤシ・ヤスシ)

1948年生まれ。著書に『カツオとかつお節の同時代史』(共編著、コモンズ、2004年)、『ODAをどう変えればいいのか』(共編著、コモンズ、2002年)、『ヌサンタラ航海記』(共編著、リブロポート、1994年)など。

宮内 泰介(ミヤウチ・タイスケ)

1961年生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。博士(社会学)。北海道大学大学院文学研究科教授。専門は環境社会学。
主要業績:『歩く、見る、聞く 人びとの自然再生』(岩波新書、2017年)、『どうすれば環境保全はうまくいくのか――現場から考える「順応的ガバナンス」の可能性』(編著、新泉社、2017年)、『なぜ環境保全はうまくいかないのか――現場から考える「順応的ガバナンス」の可能性』(編著、新泉社、2013年)、『宇井純セレクション』(共編著、新泉社、2014年)、『かつお節と日本人』(藤林泰と共著、岩波新書、2013年)、『開発と生活戦略の民族誌――ソロモン諸島アノケロ村の自然・移住・紛争』(新曜社、2011年)、『半栽培の環境社会学――これからの人と自然』(編著、昭和堂、2009年)、『コモンズをささえるしくみ――レジティマシーの環境社会学』(編著、新曜社、2006年)、『コモンズの社会学――森・川・海の資源共同管理を考える』(井上真と共編著、新曜社、2001年)。

友澤 悠季(トモザワ・ユウキ)

1980年生まれ。長崎大学准教授。主著:『「問い」としての公害――環境社会学者・飯島伸子の思索』(勁草書房、2014年)
編著:『宇井純セレクション 全3巻』(藤林泰・宮内泰介・友澤悠季編、新泉社、2014年)、『宇井純著作目録』(埼玉大学共生社会研究センター監修『宇井純収集公害問題資料2 復刻『公害原論』第2回配本 別冊資料』すいれん舎、2007年)

関連書籍

  • 原点としての水俣病FTP
  • 公害に第三者はないFTP
  • 阿賀の記憶、阿賀からの語りFTP
  • マーシャル諸島 終わりなき核被害を生きるFTP
  • 谷中村事件 〔新版〕FTP
  • 渡良瀬川 〔新版〕FTP
  • 目の眩んだ者たちの国家FTP