
差別とは何か? どのように捉えればいいのか?
可視化される差別
統計分析が解明する移民・エスニックマイノリティに対する差別と排外主義
- 四六判上製
- 432頁
- 3500円+税
- ISBN 978-4-7877-2418-2
- 2025.02.26発行
- 書店サイトへ
紹介文
「私たちは差別の何を知っているだろうか? 不可視の差別を可視化する、厳密かつ包括的な差別研究の最前線——岸 政彦」
人種差別、性差別、障害者差別、性的指向差別……。
私たちの周りでよく見聞きされる「差別」という言葉。しかし、差別ほどその存在を捉えにくいものはありません。日本の差別調査の多くは、差別される当事者に対して行われるため、その人が差別だと感じたことが、実は差別でないということがありえます。一方、差別をしている側も、何が差別で何が差別でないかが明確でないまま、差別を行っていることが多いのが実態です。「自分は外国人に対して否定的な感情を抱いていないから、差別をしていない」という説明をよく聞きますし、実際、そう考える日本人は多いはずです。しかしこの考え方は、半分は正解ですが、半分は間違っています。
外国人に対して否定的な感情をもっていなくても、知らず知らずのうちに差別をしているかもしれないのです。
差別は見ることはできないし、差別の経験談でさえ差別を十分に反映しているとは言い難いのが現状です。だから差別は一筋縄では捉えることができないのです。
では、何が原因で差別は引き起こされるのでしょうか。
本書は差別の実証研究を扱った入門書です。差別を「可視化」し、その実態を明らかにするための研究をもとに、差別の正体と、その原因、そして差別が当事者に何をもたらすのかを明らかにしていきます。
目次
序章
第1節 「移民の時代」の差別研究
第2節 本書の構成と試み
第3節 まとめ
補遺:本章で用いる手法
第1部 差別とは何か
第1章差別の理論と検証
第1節 差別とは何か
第2節 二つの差別
第3節 差別研究の新たな方向性
第4節 差別をいかに測定するか(1)非実験方法
第5節 差別をいかに測定するか(2)実験方法
第6節 嗜好に基づく差別と統計的差別の検証
第7節 まとめ
第2章どんな場面で差別が起こるか
第1節 労働市場における差別
第2節 経済活動における差別
第3節 公的機関による差別
第4節 政治にまつわる差別
第5節 多様な場面における差別
第6節 まとめ
第3章差別が人々に与える影響
第1節 差別はなぜいけないのか
第2節 差別の社会経済的影響
第3節 健康の悪化とリスク行動
第4節 集団間関係に与える影響
第5節 他者への信頼に与える影響
第6節 日本における差別の影響
第7節 まとめ
第2部 排外主義の要因
第4章排外主義とその研究史
第1節 「排外主義」とは何か
第2節 偏見・排外主義の研究史
第3節 まとめ
第5章排外主義の要因
第1節 集団脅威
第2節 ナショナリズム
第3節 情報
第4節 社会経済的地位とデモグラフィック属性
第5節 歴史の遺産…
第6節 まとめ
第3部 差別と排外主義は減らせるか
第6章差別や排外主義を減らすために
第1節 集団間接触
第2節 集団の境界
第3節 誤認識の修正
第4節 移民に関する政策と排外主義
第5節 移民に関する政策の多様な関連
第6節 日本の研究の展望
第7節 まとめ
終章
マジョリティと差別研究/海外の研究が与える示唆/日本社会と差別/日本社会に蔓延するもの
出版社からのコメント
「差別の実証研究」と聞いて、「そんなことは無理でしょ。差別は目に見えないし、ましてや測ることなんてできない」と考える人は多いのではないでしょうか。それが可視化できるとしたら、どう思いますか?
日本では馴染みのない差別の実証研究ですが、アメリカやヨーロッパでは、実体のない不可視な差別を捉えるために、これまで多くの研究が行われてきました。そして差別を可視化することで、差別問題の存在と程度を明らかにし、解決法を考えることにつなげていきました。日本ではあまりなじみのない「差別を可視化する」研究を紹介した本書が、差別とは何で、何が原因で発生し、どのような施策をすれば差別を減らすことができるのか、を考えるきっかけになればと思います。