渡辺 眸(ワタナベ・ヒトミ)
東京都⽣まれ。明治⼤学を卒業後、東京総合写真専⾨学校で写真を学びカメラマンの道へ進む。写真学校の学⽣時代には、屋台で働く⾹具師の世界を3年にわたり撮影し、卒業時の制作展で「⾹具師の世界」として発表。その後、東⼤安⽥講堂事件や新宿の学⽣運動など60年代の社会運動の現場を記録。特に東⼤安⽥講堂事件では唯⼀撮影を許された写真家としてバリケード内に留まり、東⼤全共闘と活動を共にしながら1969年1⽉の安⽥講堂攻防戦、⼤学内での集会やデモを含め、同年9⽉までの闘争の⽇々を撮影しつづける。1972年、アジアに旅⽴つ。なかでもインドやネパールの⾵⼟と⽂化に惹かれ、魂の源郷と感じ滞在する。以後、アジア諸国の旅をつづけるなかで作品を発表。1983年、インド・ネパールでの魂の軌跡をまとめた写真集『天竺』を刊⾏し評価をうける。1991年から99年まで岩波書店の「世界」で「global friends」と題してグラビアページを連載。主な写真集に『天竺』(野草社)、『猿年紀』(新潮社)『西方神話』(中央公論社)、『てつがくのさる』(ナピポ)、『東大全共闘1968-1969』(新潮社)、『1968 新宿』(街から舎)、『TEKIYA香具師』(地湧社)など。パブリックコレクションとして東京都写真美術館、パーソナルコレクション多数。
出版社からのコメント
インドの5月の朝。かすかに、ポッ、ポッという音が聞こえた。それはハスの花弁がひらく音でした──。
伝説的な写真集『天竺』に広がるインド・ネパールの世界。その撮影者である渡辺眸は、アジアの旅のなかでハスの気配を感じとります。その後、日本の宇佐神宮の「原始ハス」に出会った瞬間、水底に沈む記憶が浮上するようにハスに惹きつけられライフワーク的に撮影をはじめました。本作では、祈る姿を切りとるように撮られたものから、1コマの中に複数枚の画像を写し込む「多重露光」という技法で、幻想的なハスのイメージを重ね合わせた作品も数多く収録。数十年におよぶ軌跡の集大成です。
主な撮影地:上野不忍池・葛飾区水元公園・町田市薬師池公園(東京都)、横浜三渓園(神奈川県)、行田市古代蓮の里(埼玉県)、鴨川・長南町・佐原市水生植物園(千葉県)、草津市水生植物公園みずの森・守山市近江妙蓮公園(滋賀県)、宇佐神宮(大分県)、ケララ・タミルナドゥ(印度)など。