びろう葉帽子の下で 〔新版〕

詩人・山尾三省の代表作

びろう葉帽子の下で 〔新版〕

  • 山尾 三省/著
  • 四六判上製
  • 376頁
  • 2600円+税
  • ISBN 978-4-7877-2081-8
  • 2020.02.22発行
  • [ 在庫あり ]
  • 野草社/発行
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紹介文

◎「朝日新聞」2020.7.29
《自然にとって人間とは何か——。その問いに対する運動の中心には、詩人たちもいた。中心を担った一人が、山尾三省…だ》

◎和合亮一さん評(「産經新聞」2020.6.13)
《南の大地に暮らす静けさと深さが読む心を新鮮に育ててくれる》

◎宮内勝典さん評(「日刊ゲンダイ」2020.5.26)
《山尾三省の詩を読み返すのは不思議な体験だった。かれの詩には山河があり、海があり、自然と人間の濃密な繋がりが歌われている》

◎佐藤モニカさん書評(「南日本新聞」2020.4.12)
《三省の詩はどこまでも暮らしの上に、土の上にあるのである。三省の詩は詩を初めて読む人にも受け入れやすい》《屋久島の空や海、そして緑が、胸一杯にひろがってくる》

◎管啓次郎さん書評(「現代詩手帖」2020.4)
《日々の暮らしのすきまで記されたことばは、それ自体が枯れ枝や浜辺の石や流れてゆく雲のような質感をもち、静かさを希求している》

びろう葉帽子の下で
じゃがいもを 掘る
びろう葉帽子の上には
みっしりと夏の陽が 照りつけているが
びろう葉帽子の下では
静寂浄土が 広がり
じゃがいもが 掘られている
ものいわぬ わたくしが掘られている
びろう葉帽子の下で
じゃがいもを 掘る
——山尾三省「びろう葉帽子の下で その一」

詩は言葉によって書かれている、とお思いですか? いいえ、かならずしもそうとはかぎりません。ときどき、ほんとうにまれに、特異な詩人がいます。自分や世界を表出するための道具が、本質的には言葉ではない詩人です。詩はすでにおのずからそこにあって、それを追いかけてゆくためだけに言葉をそっと紡ぎだすような詩人です。
——今福龍太「序」

歌のまこと、私のまこと。
詩あるいは歌は、絶望に耐える希望あるいは祈りとして太古以来つくられ続けてきた。日常の中で非日常的な時をつづった詩人・山尾三省の代表作。「歌のまこと」「地霊」「水が流れている」「縄文の火」「びろう葉帽子の下で」と題された、全5部247篇を集成した1987年刊の新版。あらたに文化人類学者・批評家の今福龍太の序を収録。
(発行=野草社)

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目次

序 今福龍太

歌のまこと

川辺の夜の歌
土と詩
すみれほどな小さき人に
歌のまこと
この道 太郎に
月夜
聖老人
火を焚きなさい
淋しさ
海へ行った
家族
夕日
大工
夢起こし 地域社会原論
かぼちゃ
カワバタさん
シジフォス
台風が過ぎて

山茶花
夕食のあと

冬の島


子供たちへ
さるのこしかけ
三月一日
げんげ 九句
青い山なみ 三句
ほうせん花と縄文杉
出来事
三つの金色に光っているもの
願船寺
十七夜の雨の夜 ラマナ・マハリシに
茶の花

地霊


草を荷なって
味噌搗き キコリとサチコさんへ
秋の一日
青緑色の秋空の下で
一いっ湊そう松山遺跡にて 三句
地霊
新月
フウトウカズラ
私達の秘密
師走十四夜
サルノコシカケ
お正月
道の火
抱く
湯浴み
十二日目
卒業祝い 次郎に
夕方
春の夜
じゃがいも畑で
ゲンコツ花
うちわ
ラマナ・マハリシ
月夜
ある夜に
見たもの
拾ったもの
じゃがいも畑で
秋のはじめ その一
ウマオイムシの夜
秋のはじめ その二
土間
かやつり草
涙 その一
涙 その二
りすとかしのみ
ナガグツ
私は誰か
原郷の道
白菊
おこばな
浄雨
ジャンがくれた毛糸のマフラー

水が流れている

食パンの歌 太郎に
春一番
スモモ 五句
真暗な山の啓示
ひとつの事実 スワミ・アーナンド・ヴィラーゴに
失われた縄文時代 純に
母と太郎
野いちごの花 兵頭昌明さんに
正座
十三夜
しみじみとしたもの
ことば 斎藤正子さんに
夜の山
はじかれた日
栗の実

水の音 その一
水の音 その二
畑 その一
畑 その二
畑 その三
畑 その四
畑 その五
畑 その六
鹿の啼き声
紅茶を飲む
山で
一瞬
綿入ればんてん
法服格正講話
千恵子先生
ナバ山で
阿弥陀佛と十四本の大根
般若心経
夜明けのカフェ・オーレ
十七夜

焼酎歌

父と海 十五句
なぜ 父に
たまご
スイッチョ
ひがんばな
秋 その一
秋 その二
秋 その三
秋 その四
ミットクンと雲
ゲンノショーコ


草の生えている道
草の道
この道
水が流れている その一
水が流れている その二
水が流れている その三
暗い目

祈りのことば
ヴァジュラサットヴァ(金剛薩埵菩薩)
ひかり
大根おろし
つわぶきの煮つけ
春の朝 その一
春の朝 その二
桃の花とスモモの花と
スモモの花
春彼岸
五つの根について
森について
月について
存在について
祈りについて


縄文の火

存在について
矢車草 その一 松本碩之さんに
矢車草 その二
矢車草 その三
個人的なことがら
月夜 その一
月夜 その二 林謙二郎に
月夜 その三
月夜 その四
うづくもる
おわんどの海
梅雨入り
ガクアジサイ その一
ガクアジサイ その二
ひとつの夏
草刈り
畑にて その一
畑にて その二
静かさについて

月を仰いで
空気の中に
風 伊藤ルイさんへ
いろりを焚く その一 亡き父に
いろりを焚く その二
いろりを焚く その三
いろりを焚く その四
いろりを焚く その五
いろりを焚く その六
いろりを焚く その七
いろりを焚く その八
冬至
任意団体日本いろり同好会十ケ条
真事 その一
真事 その二
真事 その三
二人

美しい椿つばき ロレインに
椿つばき


桃の花 寺田猛・久美子さん祝婚
桃の木
夜明け前
子守歌(道人発熱)
道人の作った替え歌

びろう葉帽子の下で

トッピョイチゴ
只管打坐
びろう葉帽子の下で その一
雲のかたち
かみさま
びろう葉帽子の下で その二
びろう葉帽子の下で その三
びろう葉帽子の下で その四
びろう葉帽子の下で その五
びろう葉帽子の下で その六
びろう葉帽子の下で その七
びろう葉帽子の下で その八 ルイさんに
びろう葉帽子の下で その九
びろう葉帽子の下で その十
びろう葉帽子の下で その十一 M・エンデと坂村真民さんに
びろう葉帽子の下で その十二
びろう葉帽子の下で その十三
びろう葉帽子の下で その十四
びろう葉帽子の下で その十五
びろう葉帽子の下で その十六
びろう葉帽子の下で その十七
びろう葉帽子の下で その十八
びろう葉帽子の下で その十九
びろう葉帽子の下で その二十
びろう葉帽子の下で その二十一
びろう葉帽子の下で その二十二
びろう葉帽子の下で その二十三
びろう葉帽子の下で その二十四 第三回バック トゥ ネイチュア コンサートに
真言
満潮
神宮君の話 その一
神宮君の話 その二
秋 その一
秋 その二
こおろぎ その一
こおろぎ その二
こおろぎ その三
こおろぎ その四
こおろぎ その五
こおろぎ その六
暗闇

あとがき
別記
新装版あとがき

出版社からのコメント

詩人・山尾三省の生誕80年を記念して、著者の著作の中でもっとも人気の高いロングセラーの詩集を新版として刊行します。装画は画家のnakabanが「屋久島のハマビワ」を描いた作品です。本文にも、詩人の心象風景を表現したnakabanによる切り絵イラストを多数掲載しています。また、付録の栞(手塚賢至「『びろう葉帽子の下で』に寄せて」、nakaban「鋏を手に、詩人を想った日」、8ページ)も、本書の読みどころです。紙のやさしい手触り、ブックデザインの美しさにもこだわっています。

著者紹介

山尾 三省(ヤマオ・サンセイ)

1938年、東京・神田に生まれる。早稲田大学文学部西洋哲学科中退。67年、「部族」と称する対抗文化コミューン運動を起こす。73年〜74年、インド・ネパールの聖地を1年間巡礼。75年、東京・西荻窪のほびっと村の創立に参加し、無農薬野菜の販売を手がける。77年、家族とともに屋久島の一湊白川山に移住し、耕し、詩作し、祈る暮らしを続ける。2001年8月28日、逝去。
著書『聖老人』『アニミズムという希望』『リグ・ヴェーダの智慧』『南の光のなかで』『原郷への道』『インド巡礼日記』『ネパール巡礼日記』『ここで暮らす楽しみ』『森羅万象の中へ』『狭い道』『野の道』(以上、野草社)、『法華経の森を歩く』『日月燈明如来の贈りもの』(以上、水書坊)、『ジョーがくれた石』『カミを詠んだ一茶の俳句』(以上、地湧社)ほか。
詩集『びろう葉帽子の下で』『祈り』『火を焚きなさい』『五月の風』(以上、野草社)、『新月』『三光鳥』『親和力』(以上、くだかけ社)、『森の家から』(草光舎)、『南無不可思議光仏』(オフィス21)ほか。

関連書籍

  • 狭い道〔新版〕FTP
  • 野の道〔新版〕FTP
  • 火を焚きなさいFTP
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