考古地域学を学ぶ

考古学による歴史叙述の方法と試み

考古地域学を学ぶ

戸沢充則の考古学

  • 海戸塾(代表 勅使河原彰)/編
  • 四六判
  • 304頁
  • 2300円+税
  • ISBN 978-4-7877-2206-5
  • 2022.11.01発行
  • [ 在庫あり ]
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書評・紹介

紹介文

放射性炭素年代測定、炭素・窒素同位体分析、DNA分析……個別・細分化した科学分析が隆盛するなか、考古学は何を目指すのか。

戦後、旧石器時代・縄文時代研究をリードした考古学者、戸沢充則の貝塚文化、井戸尻文化などの実践から、考古学で歴史叙述する方法を解説。

目次

はじめに

Ⅰ 考古学研究

第1章 先土器時代研究             大竹憲昭
1 戦後第一世代の考古ボーイ
2 出発点――茶臼山遺跡と八島遺跡
3 新たな石器群研究の方法の提案――インダストリー論
4 新たな石器群研究の実践――砂川遺跡
5 研究の画期――月見野遺跡群
6 遺跡群研究への視座
7 先土器時代研究の体系――歴史叙述の試み
8 先土器時代研究を現代社会へ

第2章 縄文時代研究              三上徹也
1 青年戸沢の不満と志向
2 土器型式編年研究の具体的実践
3 土器の背景に歴史を描く
4 集落・領域研究
5 考古地域史論の提唱と実践
6 戸沢縄文研究と現在

第3章 学際的研究               山科 哲
1 考古学と学際的研究
2 夏島貝塚の放射性炭素年代
3 縄文中期農耕論
4 矢出川遺跡の共同研究

Ⅱ 学問を育むもの

第4章 信州教育と戸沢充則          中島 透
1 諏訪の歴史研究と教師たち
2 戸沢と教師たち
3 信州教育が戸沢に与えたもの

第5章 藤森栄一と戸沢充則           藤森英二
1 藤森栄一について
2 藤森と戸沢のつながり
3 戸沢と藤森考古学
4 社会にかかわる姿勢
5 純粋性と反骨心

Ⅲ 社会への責任

第6章 遺跡は誰のためのものであるべきか     井口直司
1 開発と「緊急発掘調査」体制
2 試み:小さな街の大きな発掘 多摩湖遺跡群
3 課題:対立でない対話 東久留米市の保存活用
4 希望:地元でヨイショ 陸平貝塚と動く博物館構想
5 確信:糞が宝になった 鷹山遺跡
6 日本考古学の役割と責任

第7章 考古学と社会               追川𠮷生
1 考古学の原体験
2 市民のための考古学
3 平和のための考古学

第8章 旧石器ねつ造問題と戸沢充則       勅使河原彰
1 「旧石器ねつ造」の報道
2 前・中期旧石器問題調査研究特別委員会準備会の設置
3 検証作業とその結果
4 戸沢がはたした役割
5 考古学を未来へつなぐ

執筆者一覧

出版社からのコメント

メディアを賑わす遺跡・遺物の新発見だけが考古学ではありません。人びとの暮らしや時代を明らかにしていきます。

著者紹介

海戸塾(代表 勅使河原彰)(カイドジュク)

海戸塾は、戸沢充則が晩年、郷里岡谷でみずからの考古学を振り返るとともに、時々の仲間と語り合う場として、著名な海戸遺跡近くに設けた施設。戸沢の没後、教え子らが海戸塾に集まり、戸沢考古学を継承するために企画したのが『考古地域学を学ぶ 戸沢充則の考古学』。代表:勅使河原彰。

戸沢充則(トザワ・ミツノリ)
1932年、長野県岡谷市に生まれる。1945年秋、旧制中学校一年生の時に、学校の裏山で縄文土器片を拾い歴史の真実に触れた感動から考古学の道を歩む。高校生時代には、藤森栄一氏が主宰する「諏訪考古学研究所」に参加。その後、明治大学文学部考古学専攻に進学。以後、明大で岩宿時代・縄文時代の研究と学生の指導をつづけ、明大考古学博物館長、文学部長、学長を歴任。2000年3月に退職。明治大学名誉教授。その一方で、「市民の考古学」をモットーに各地で市民参加の発掘調査、考古地域史研究を実践する。2000年12月より2002年6月にかけて、日本考古学協会の「前・中期旧石器問題調査研究特別委員会」委員長として旧石器発掘ねつ造事件の検証調査にあたる。2012年4月9日、逝去。

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