父の逸脱

父の逸脱

ピアノレッスンという拷問

  • セリーヌ・ラファエル/著
  • 林 昌宏/訳
  • ダニエル・ルソー/解説
  • 村本 邦子/解説
  • 四六判上製
  • 276頁
  • 1900円+税
  • ISBN 978-4-7877-1709-2
  • 2017.09.15発行
  • [ 在庫あり ]
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書評・紹介

紹介文

〈魂の殺人〉からの生還

わたしの物語に耳を傾けて――。
忘れてしまうべきか。赦せばよいのか。どのようにして人生をやり直せばよいのか。
音楽の才能があると言われ、わたしはピアノを弾く家畜になり、父はわたしを拷問し続けた。周りの人たちは目を背けた――。

お稽古地獄という虐待を生き延びた少女の告白。
フランスで大反響を巻き起こし、映画化も決定したベストセラー。

「快活だったわたしは、多くの子どもたちのようにほんの少し反抗的な子どもだったのかもしれない。
だがまもなく、わたしは元気をなくし、壊れてしまった。自分の意見をまったく述べられなくなり、嫌と言えなくなり、やめてと叫べなくなり、訴えることができなくなってしまったのだ。
好奇心旺盛だった二歳の女の子は、数年後には自分が生き延びることだけを考えるようになったのである。ピアノの白鍵と黒鍵だけに向き合う生活が始まったのだ。」(本文より)

目次

プロローグ
1 二歳半、最初の音符
2 「お父さん、あなたの娘さんは才能がありますね」
3 寡黙になる
4 恵まれなかった両親の子ども時代
5 フランスに戻る、ほのかな希望
6 最初のコンクールと地獄への転落
7 密かな楽しみ
8 おまじない
9 地獄の週末
10 初の国際コンクール
11 オルゴール
12 スタインウェイ・アンド・サンズ
13 無言の抵抗を試みる
14 ベルトラン先生に打ち明ける
15 保健師マリオン先生
16 ミュンヒハウゼン症候群
17 フランス・ミュージック
18 怒り狂う
19 身体検査
20 事情聴取と最初の受け入れ先
21 匿名でかくまわれる
22 ホストファミリー
23 児童養護施設
24 進 展
25 子どもを訪問する権利
26 自由な寮生活
27 叔母クリスティーヌ
28 宿泊権
29 虚言症
30 自宅に戻る
31 最後の闘い
エピローグ

著者紹介

セリーヌ・ラファエル(Celine Raphael)

1984年4月11日、フランス中南部オーヴェルニュ地域圏生まれ。医師そして虐待の被害体験者として、児童虐待に関する提言・啓発活動を精力的に行なっている。

1986年、2歳半のときに父がピアノを購入。
1988年、4歳のとき、ピアノの練習中に初めて父の体罰を受ける。
8歳でピアノのコンクールに初優勝し、10歳で毎日7時間ピアノの練習をする。
1994年、第4回エトリンゲン国際青少年ピアノコンクールに第3位で入賞。
1998年、14歳のとき、校医の支援を受けて父の虐待を警察に通報。
施設暮らしを始めるが、17歳のときに医学部進学のため両親の家に戻る。
18歳で医学部に入学。妹とともに家を出て2人暮らしを始める。
2008年、理学博士の学位取得。
2010年、研修医になる。児童虐待に関する論文を執筆。
2012年、児童精神科医ダニエル・ルソーらとともに児童虐待対策の提案書を大統領に提出。
同年、本書をフランスで出版。医学博士の学位取得。
2013年、フランス上院の「児童虐待」討論会に出席。
2014年、厚生大臣に児童虐待に関する報告書を提出。
2015年、児童保護法案について国会で意見陳述。同法は翌年可決。
2016年、政府の児童虐待撲滅計画の原案作成に参加。
2017年、児童保護に関する国家審議会のメンバーに任命される。

林 昌宏(ハヤシ・マサヒロ)

1965年、愛知県生まれ。翻訳家。立命館大学経済学部経済学科卒業。訳書:『アンデルセン、福祉を語る』(イエスタ・エスピン=アンデルセン、NTT出版)、『21世紀の歴史』(ジャック・アタリ、作品社)、『アタリ文明論講義』(ちくま学芸文庫)、『迷走する資本主義』(ダニエル・コーエン、新泉社)、『経済と人類の1万年史から、21世紀世界を考える』(ダニエル・コーエン、作品社)、『ユートピアの崩壊 ナウル共和国』(リュック・フォリエ、新泉社)、『繁栄の呪縛を超えて』(ジャン=ポール・フィトゥシ他、新泉社)、『父の逸脱――ピアノレッスンという拷問』(セリーヌ・ラファエル、新泉社)、『憎むのでもなく、許すのでもなく』(ボリス・シリュルニク、吉田書店)、『心のレジリエンス』(同前)など多数。

ダニエル・ルソー(Daniel Rousseau)

児童精神科医。20年以上にわたり、児童社会扶助機関(ASE)の養護施設で恵まれない子どもたちを支援している。
主著に、Les grandes personnes sont vraiment stupides(『大人は本当に愚か――苦境に陥った子どもたちから学ぶべきこと』Max Milo、 2012)など。

村本 邦子(ムラモト・クニコ)

立命館大学大学院応用人間科学研究科教授。臨床心理士。1990年、大阪に女性ライフサイクル研究所を設立し、女性と子どものトラウマや、災害や戦争などコミュニティのトラウマに取り組む。
主著に、『暴力被害と女性―理解、脱出、回復』(昭和堂、2001年)、『「しあわせ家族」という嘘――娘が父を語るとき』(創元社、1997年)など。

関連書籍

  • 真っ赤な口紅をぬって